暴君との素敵な結婚生活 (小学館ルルル文庫 み 4-14)

著者 :
  • 小学館 (2015年4月24日発売)
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感想 : 8
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ヒロインのお父様がすごく格好良くて、オッサン愛に目覚めてしまいそう。お可哀相にとか、不憫な、とか、思わないでもなかったですけど、あの方はきっと悔いや心残りがあってもそれをネガティブには受け止めず、肯定してしっかり抱えて前へと歩んでいらっしゃるのだろうと思うと、思わず涙ぐんでしまいそう。
お母様も、確かに酷い女で酷い母親だなと思ったけど、でもそれが全てじゃなくて、多分そうせずにはいられない苦しみが彼女を駆り立ててるんだと思ったら、やっぱり泣きたくなる。自分を痛めつけていないと安堵できない心理状況というのは、私にも理解できないわけではない。なんか偉そうな物言いになるが、確かに同情に値する女性ではあった。彼女はきっと、根が純粋で潔癖な女性だからこそ、あそこまで引きずり苦しんでいるんだろう。彼女の少女性。汚い大人になれればもっとずっと楽だろうに。

ただ、ちょっと残念に思ったのは、そこらへんのご両親のお話とか、登場人物の話題にちらりと出てくるだけだったヒロインの兄弟の話とかももっと掘り下げて、せめて前後編くらいで読んでみたかったこと。ヒロインが自分の出生を知ったエピソードとか、母親の過去の状況も若干不透明に感じて、確かに想像で補える範囲内だとは思ったけど、主人公カップルやその周りの人物達が好きだからこそ、もうちょっと丁寧に読んでみたかったなというのが正直な感想。一冊で纏まってはいる、しかし若干の物足りなさ、というのが星四つの理由。この際せっかくだから、お母様の苦しみが払拭されてほしかったな・・・そうすると確実に物語の展開変わっただろうけど。これから亡くなるまでにゆっくりと時間をかけて癒していくんだろうけど、でもそれを物語として読んでいくことは出来ないからね・・・想像するだけでは満たされない切なさ。俺だけだろうか。一人くらいお父様の子産んであげてよと思うのは浅はかなのかな。そういう問題じゃない気もするし。ヒロインの兄弟達はそのことを知っているのだろうか。知っているとしたら、どう受け止めているんだろう。なんかそれだけでも短編一つくらいにはなりそうだ。妄想が止まらない。やっぱり宮野先生、大好きです。

最後に思ったのは、傷が治らないのは掻き毟るから。いつかそうすることをやめて、穏やかに受け入れられるような日がお母様に来るといい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 少女小説
感想投稿日 : 2015年4月25日
読了日 : 2015年4月25日
本棚登録日 : 2015年4月25日

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